2015年05月14日

郵便局に行くん


郵便局に行くん


あ、ハルちゃん、カメラ忘れちゃった!
と、言えば「そりゃ大変だ!」とばかりに家に戻る。

行きたい方向と違う方向に歩こうとするハル。拾ったばかりのハルが落とした物をかざして「ハルちゃん、これ捨てなくちゃならないから」と言うと、ゴミ箱の方へすんなり歩き、そして捨てた後は元の方向へ戻るuniversity scholarship

あのね、ハルちゃん、お水飲んでいるけれど念のために言っておくとこれからお留守番だからね。
と言えば、「え??!!」という顔をしてこちらを見、そしてお水を飲むのをやめる。

「ハルちゃん、行く前に行った通り、今日は郵便局に行くんだよ。」と言うと、「そうだったそうだった」と郵便局の道へと向かう。

ハルちゃん、そっちはぬかるんでいてバッチバッチだから、駄目よ。
と言えば、「あ、ほんとだ」とばかりに泥を上手に避ける。

最初は「ハル」という名前も分からず、「SIT」「WAIT」「STAY」なんて言う基本的な単語も知らなかったハルが、今は私と会話する。
そうだよね、7年間、ずっとずっとハルに話しかけてきたからね。ハルは何でも分かるよねuniversity scholarship

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シェルターで一番端っこのケイジに入れられ、コンクリートの床にちんまりと座ったいた小さな犬を見に行ったのはもう7年前になるらしい。近寄っても尻尾を振る訳でも無く、ただの「可愛い犬」だったPUCHYだったが、何となく惹かれるものがあり申請を入れた。そしてその後、哲に見に行ってもらった。哲も「素っ気ない犬」と思い、この時にはコネクションを感じなかった。そんなPUCHYだった。

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犬を飼うと決めてから何匹かの犬に申請を入れたが運が無く、そしてやっとこの小さなPUCHYに巡り会えた。PUCHYは見知らぬ人の車に乗せらせて、そして見知らぬ人の家に到着した。二階への階段を登ることも出来ず、抱きかかえて家に入れた。そして、到着した家で、クレイトを作るおじさんを見守っていた。

冷たい床が嫌いで、どんなに暑い夏の日でもカーペットの上でしか眠れないこの犬が、あの時はシェルターの冷たいコンクリートの床で過ごさなくてはならなかったのだ。その様子を想像しては何度鼻の奥をツーンとさせたことだろう。

当時私は心身ともに病み、極度に痩せていた。何をするにもエネルギーが無く、二階に位置するアパートへの階段も、最初の日のPUCHYのように登ることが出来ず、頑張って登っては息切れするような日々だった。重たい掃除機を持つことも、そしてベッドカバーを1人で替えることも出来なかった。自分の面倒も看るのが精一杯の7年前だったeleaf gs air 2

私が一番苦しんでいた時にPUCHYはやって来た。哲の他に、唯一弱い私を見て知っている子がハルなのだ。誰に会うのも疲れてしまい、引きこもりがちだったあの時の私はハルと歩くことが唯一の外出で、ハルと話しては誰かと話しているつもりになっていた。

雨の日も、風の日も、雪の日も、暑い日も、あの子を散歩に連れて行かなくてはならず、「頑張れ!」と自分を励ましては毎日毎日ハルと歩いた。

ハルと歩くようになって犬を連れた人と話すようになり、そしてハルと歩くようになって外に出るのが気持ちよく感じるようになり、ハルと歩くようになって見えなかったものが見えて来た。あぁ、春はこんなお花が咲くんだ。あぁ、夏にはセミがこんなにうるさいんだ。今振り返ると、気付かぬうちに、ゆっくりゆっくりじわじわと、私の体と心は上向きになっていた。

私の人生のうちのたった6分の1である7年というと短い年月だが、このハルとの7年はその前まで過ごして来た7分の6の人生とは全く違う色を持ち、そして宝物のような7年だった。

心身共に強くなれたのは温かく忍耐強く見守ってくれた哲、そして苦しい時には支えてくれた家族や友達のお蔭だが、でもハル無しには今の私がいないと言っても良いほど、ハルは私の「今の」人生を作り上げてくれた。



Posted by hechengni at 10:54│Comments(0)
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